企業インタビュー
三井物産株式会社 企業インタビュー|20代で企業内コンサルティング部署へ、注目の若手が考えるビジコンプラス室で身に着けることができるスキルセットとは?
三井物産株式会社総合力推進部ビジネスコンサルティング+室ビジネスコンサルティング+室(BC+室)は、三井物産連結グループの企業価値向上を目的としたグループ企業内コンサルティング部署です。
国内外、企業の大小問わず様々な経営改善プロジェクトの経験を積むことで、三井物産グループ会社の経営ポジションとしてのキャリアパスが開けます。
今回は、三井物産に経理・財務担当として入社後、DX推進を進めることで頭角を現し、20代という若さで同室へ異動された村瀬氏へ、ビジネスコンサルタントとしての経験も持つ弊社代表取締役社長の大原が、今までの業務経験・BC+室における業務について、インタビューを行いました。
三井物産株式会社 総合力推進部ビジネスコンサルティング+室 村瀬 志綱氏
プロフィール
2019年三井物産入社後、三井物産グループの経理・財務機能を担っている三井物産フィナンシャルマネジメント株式会社に出向し、 モニタリング業務・内部統制・単体決算・連結決算・開示業務に従事。
2022年8月よりビジネスコンサルティング+室に異動
配属間もないタイミングで社内のワークフローに疑問を持ち、0からDX推進を実施した
大原:
村瀬さんは、経理とDXの2つの軸を持ってバリューを提供していますが、BC+室に異動されるまでの経験を教えてください。
村瀬氏:2019年に三井物産へ入社し、最初は経理担当者として、三井物産グループ全体の経理業務を担当していました。単体決算から連結決算、開示業務までの経理業務全般を行い、トータル3年ほど経験させていただきました。
配属されて間もないタイミングで、様々な業務の承認が紙ベースで行われていることに改善余地があると強く感じ、承認ワーフクローの電子化を含んだ経理・財務業務のDX推進に興味を持ちました。ITベンダーから様々な話しを聞き検討していましたが、当社業務要件にマッチしなかったため、Microsoft社のPower Automateというローコードツール使って、スクラッチからシステムを構築することを試みました。
Power Automateの知識は一切持っていなかったので、実際にMicrosoft社へ伺わせていただいて、使い方を学びながら、多段階承認ワークフローの電子承認システムを構築することが出来ました。システムができても実際に運用まで落とし込むことに苦労しましたが、当時の上長や周りの協力もあり、規程や運用ルールなどを定め各部署に説明会を実施し展開しました。
また、ワークフローツール展開後、しばらくしてCovid 19が流行したこともあり、出向先企業内で急速なツール普及につながったのに加え、グループ他企業でも導入支援を依頼されるようになり、最終的に三井物産のデジタル総合戦略部(DX推進部署)がグループ全体に向けて本ツールの導入支援と保守を実施する、という流れが出来、自分としても一定の貢献ができたと感じています。
大原:
配属間もないタイミングであれば、通常は業務を覚えるので精一杯なのが一般的ですが、業務改善まで主体的に実施したのは素晴らしいですね。その経験から部署におけるDX関連業務を提案・企画・実施することが増えたのでしょうか。
村瀬氏:はい、そうですね。
例えば、経理業務における計上内容のダブルチェックについても、当時その業務にかけていた工数と効果を比較すると効率化余地があると感じました。
とはいえ、若手の私が特にファクトのない状態でダブルチェックの簡略化を伝えても説得力がないので、データから統計的に誤りが起こりやすい勘定科目や税コードの組み合わせなどを分析し、更に経理業務経験が豊富な方のアドバイスを融合させたヒートマップを作成しました。それにより、統計とロジックで割り出されたリスクのある計上内容のみをチェックする、というオペレーションに変更されました。
大原:
私自身、何回も転職活動していて、特に直近何社かは中小企業なので、財務・経理の部署がこのようなDX推進を主体的に実施する状況を見たことがないのですが、もともとこのような業務変革に向けた活動に対して積極的に取り組む部署だったのでしょうか?
村瀬氏:三井物産のカルチャー的に挑戦や改革に対して寛容だったことが大きいと思います。加えて、電子照査化などのDXを推進する中で組織としても重要性を理解し、継続的にこのような活動を実施するために委員会を設立する等の仕組み作りをするようになりました。
組織としてこのような活動を実施する中で、私自身もRPA導入や勤怠状況の可視化、フォルダルールの定型化なども経験でき、財務・経理関連の専門軸に加え、DXというもう1つの大きな軸の形成につながりました。
将来のビジョンから逆算的に必要な経験を考えBC+室へ
大原:
経理部で得られた知識・経験を踏まえて、BC+室に異動したいと考えた理由は何だったのでしょうか。
村瀬氏:私自身、高校・大学と体育会の主将を務め、ビジョンを掲げてその実現に向けて人を引っ張っていくというロールがそもそも好きであったこともり、将来的には経営者として経営に関わりたいという強い想いがあります。
その将来的なキャリアパスを考えたときに、その当時保有していた経理・DXという軸に加え、課題の特定、経営に対するワークフレームの知識など経営に関する経験がもっと必要になると感じました。
三井物産内でそのような経験が得られる部署がないかと探したところ、BC+室の存在を知り、異動願いを出したのが経緯になります。
新たなスキルを身につけながらも、経理に関する知識で即戦力として活躍
大原:
BC+室へ異動後、どんなテーマ、業務を扱っていますか。
村瀬氏:1年目はコスト削減、PMI、収益改善、データドリブン化経営促進などがメインでした。コスト削減・PMIについてはテーマの基礎知識がなかったのに加え、コンサルティングの作法として、スライドライティングスキル、論点・仮説思考スキルが全く身についておらず、とても苦労しました。
一方、経理とDXの経験により、収益改善・データドリブン経営促進のテーマでは付加価値を発揮できたことが救いとなりました。また、様々なテーマのプロジェクトを同僚であるコンサルファーム出身の皆さんと進める中で、当初身についていなかったスキルが徐々に身につき、成長を感じることが出来ました。
この2年間で国内外のグループ企業向けに戦略策定、業務改善など様々なテーマのプロジェクトを経験でき、本当に素晴らしい環境で仕事ができていると感じています。
大原:
コンサルファームとの違いとして、専門性により特化するのではなく、様々な経営課題に対して幅広く専門性を持てることがビジコンの特徴だと感じています。
となると、全く知らないテーマのプロジェクトに参画することが多々あると思いますが、村瀬さんはそのような際にどのようにアプローチされるのでしょうか。
村瀬氏:まずは関連するテーマの書籍を読み自分自身の仮説を作ることが多いです。最近は大手コンサルティングファームから様々な書籍が出版されているので、一般的なアプローチや、ボトルネックになりやすいポイントなどは事前に抑えることができます。
また、BC+室において過去実施したプロジェクトの資料をアーカイブ化しているため、今までのナレッジ、デリバリーされた資料がすべて閲覧可能となっており、担当しているテーマと似たようなプロジェクトがないか確認、使えるようなフレームワークを活用したり、進め方を参考にしたりしています。
その後にチームメンバーに対して自分自身の仮説に対してコメントを貰うことが多いです。積極的に手を動かして議論の叩き台を作ることを意識しております。
経営に必要な、事業会社に必要なプロセス・ソフトスキルが身につく
大原:
BC+室では、村瀬さんのようにプロパーの方、コンサルティングファーム出身の方がいらっしゃいますが、コンサルティングファーム出身の方とご自身を比べて、どんな所に違いを感じますか。
村瀬氏:ハードスキル面においては、論点・仮説思考、構造化、定量分析、情報収集、スライドライティングなど、いわゆるコンサルタントとして重視されているスキルにおいてコンサルティングファーム出身の方が圧倒的に長けており、学ぶことが多かったです。ソフトスキルにおいては個人のスタイルがあるため出身企業において差は生じていないかと思います。
大原:
その他の観点でコンサルティングファーム出身者の同僚との違いについて、何か感じるものはありますでしょうか。
村瀬氏:私自身がコンサルファームにいた経験がないので、あくまでも想像の範囲ではありますが、コンサルティングファームの場合、当然にクライアントからの委託であり、コンサルティングフィーも発生するため、クライアントはプロジェクトに対してある程度社内で意思統一をした上で臨むと思います。
一方、三井物産のグループ会社と三井物産の間には、複数の関係部署・関係者が存在し、BC+室は様々な関係者よりグループ会社の経営課題に対するアプローチについて依頼されることが多い状況です。そのため、グループ会社における現場の状況と依頼内容にギャップがあることも珍しくなく、プロジェクトを始める前段として、様々な関係部署に対する状況確認・情報収集が必要となるケースがあります。
コンサルティングファーム出身の方から見ると、そのようなコミュニケーションでの非効率性に関して多少ストレスを感じるタイミングがあるかもしれませんが、特に総合商社では社内関係者が多く、社内のコンセンサスを取ることは重要な要素だと思いますし、将来、経営者として経営に関わるという目標から考えると、現段階でそのようなソフトスキルとして身につけられることについてはポジティブにとらえています。
大原:
私自身、コンサルティングファームから自己資金投資会社に転職した後に、投資先の経営企画本部に常駐し、様々な経営課題にアプローチする際に同じ経験をしました。
個人的には当然非効率的なアクションを好んではやりませんが、株主から企業価値を増加させるために派遣されていたため、成果につながるために必要なアクションは非効率的なことでも全力でやりましたし、例えば私自身が悪くなくても頭を下げれば物事が進むのであればいくらでも頭を下げました。
すべては成果を出すためであり、そのために必要なアプローチは何でもやる、というのは経営に関わる方にとっては必須のアクションだと感じていますので、まさに経営に関わる経験をされていると感じました。
国内外を問わず、様々なテーマを扱える
大原:
現在扱っているテーマについて教えていただけますか。
村瀬氏:現在は、海外グループ会社の農業関係の企業を担当しています。テーマは収益改善を実現するために、検討の土台となる管理会計構築から始めて、営業戦略策定、調達戦略策定・外部環境分析など、一気通貫で扱っています。
BC+室のプロジェクトにおいては、特定の細かい課題にというよりは、大きな課題に対するアプローチを依頼いただくことが多いので、必然的に扱うテーマも大きくなることがよくあります。課題特定から始めて、全体の業務改善に取り組めるため、1つのプロジェクトにおけるテーマの幅が広くなることもBC+室のプロジェクトの特徴と感じています。
大原:
海外プロジェクトに関わることが多いのでしょうか。
村瀬氏:私の2年間の経験においては、国内グループ会社より海外グループ会社のプロジェクトの方が多かったです。三井物産の収益の半分以上は海外グループ会社によるもののため、当然に海外グループ会社のプロジェクトが多数あります。
コンサルティングファームの方も多少海外クライアント向けプロジェクトはあると思いますが、BC+室ではより多くの海外プロジェクトを経験できますので、ご自身の経営人材としてのスキル・経験の幅を広げることが可能となります。
30代で経営ポジションを経験したい
大原:
今後の展望について教えていただけますでしょうか。
村瀬氏:30代で三井物産の関連会社で経営ポジションを経験することを目標としています。
目標を実現するため、もともとの自分の軸である経理とDXに加えて、BC+室において身に着けるスキルを経営ポジションを務める上で軸にしたいと考えています。
三井物産の関連会社は、数億円規模から数千億円規模の大きな会社が多く、この規模の企業の主要ポジションを30代で経験することは、通常のビジネスマン人生においては多くチャンスがあるものではなく、総合商社ならではだと感じています。だからこそ是非チャレンジしたいという強い想いを持っています。