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PEファンド業界への転職|投資担当者の業務や求められる人材を紹介
目次
PEファンドの投資担当者は、M&Aや企業のバリューアップ、会社運営など多岐にわたる業務に関わることができる魅力的な職種です。経験を積むことで高収入も期待でき、収入面でも非常に魅力があります。
今回は、PEファンドの投資担当者の業務内容や年収、人材要件について、PEファンドの投資先で取締役や執行役経営戦略担当などを歴任した経験を持つMWH HR Products株式会社の代表取締役社長 大原智彦氏に話を伺いました。
PEファンドとは
PEファンド(Private Equityファンド)は、未公開株に投資するファンドのことです。
ファンドとは、機関投資家を含む投資家からお金を集め、その運用先を選んで投資する仕組みです。不動産や上場株などに投資するファンドもあるなかで、俗にいうオルタナティブ投資の一つとして、PEファンドがあります。
ベンチャーキャピタルとの違いは投資先で、PEファンドは成熟期ステージにある企業への投資を中心に行っています。例えば、伝統的な企業や大企業の子会社のカーブアウト、後継者がいない企業の事業承継やMBO、経営が上手くいっていない上場企業の非公開化などを行うケースが比較的多くなっています。
PE投資の市場規模
PEファンドは2000年頃から徐々に登場してきました。
2010年前にリーマンショックの影響で少し落ち込み、その後はしばらく停滞していたものの、2016年以降は成長を続けています。
老舗PEファンドもあれば、ここ5〜10年で立ち上がってきた比較的新しいファンドも増えています。大企業のコア事業への集中や事業承継問題など、今後の日本の産業構造を考えると、PEファンド業界は今後も成長が見込まれます。
PEファンドの投資担当の業務内容
PEファンドの投資担当の業務は、大きく次の5つに分けられます。
・機関投資家からのお金集め
・ソーシング
・投資に向けた業務
・PMI・バリューアップ
・EXIT
5つの業務を、詳しくご説明します。
機関投資家からお金集め
1つ目は、機関投資家からの資金集めです。
どれだけ資金を集められるかにより、会社の体制をどの程度拡大できるかが決まるため、資金集めは非常に重要です。この業務は若手ではなく、主にパートナークラスが担当します。
ソーシング
2つ目は、投資先のソーシングです。
投資先の発掘方法はさまざまありますが、近年はM&Aが一般的になってきており、多様なルートから投資先の話が入ってくるケースが増えています。
ファンドとしては相対(一対一の交渉)が理想的ですが、最近では売り手側も外部のファイナンシャルアドバイザーを雇い、できるだけ高く売るためにBID形式を採用するケースが多く、複数の事業会社やファンドと価格競争が生じることもあります。
自分で築いたネットワークからもってくるケースもあれば、間に入っているFAが話を持ってくるケースもありますが、最近では後者のケースが増えています。
投資に向けた業務
3つ目は投資に向けた業務で、大きく次の4つがあります。
デューディリジェンス
デューディリジェンスは、会社の調査のことです。
財務、法務、労務、ビジネスなどさまざまな角度から調査を行います。
デューディリジェンス自体は外部の専門家に委託するケースが多く、調査の結果出てきた課題への対応が、PEファンドの投資担当者の役割となります。
バリエーション
バリエーションは株式価値の算出や企業価値の評価のことで、PEファンド投資担当者のメインの仕事であり、非常に重要な業務です。
中期計画に関してはビジネスDDである程度評価を行いますが、その他デューディリジェンスも含めて最終的な買収価格については財務モデリングを作成しながら意思決定を行います。
特に若手の投資担当者は財務モデリングが業務の大きな割合を占めるため、多くの企業が採用において財務モデルのスキルを重視する傾向にあります。
銀行とのレバレッジ交渉
買収はファンドからの資金と銀行から借り入れる資金の合計で行うため、銀行からどのような条件で融資を引き出せるかが非常に重要なポイントとなります。
PEファンド側より事業計画や投資スキーム、バリューアッププラン等を説明、最終的に手法・金額含めたEXITの見立てを説明し、銀行は融資条件・金額、コベナンツ条件を判断します。
契約書交渉
最後にSPA(Stock Purchase Agreement)を締結して、投資の決定に至ります。
単に価格だけでなく、例えば、バリューアップ施策やデューディリジェンスで浮かび上がったリスクの排除等を盛り込みながら交渉を進めていくため、契約書交渉も非常に重要な仕事になります。
PMI・バリューアップ
4つ目は、投資後に行うPMIやバリューアップです。
一般的に、PEファンドは買収から3〜5年で売却(EXIT)すると言われています。売却金額から投資資金を差し引いたものがPEファンドの利益となるため、売却までの間にどれだけ企業価値を高めていけるかが大きなポイントになります。
EXIT
5つ目は、EXIT(売却)です。
投資自体は誰でもお金を積めばできますが、EXITで利益を出すのは非常に難しいことです。しっかりEXITできなければ利益も出ないため、EXITも非常に重要になります。
PEファンドで求められる人材
PEファンドの投資担当者の人材要件にぴったり当てはまるのは、投資銀行やFASでM&Aアドバイザリー業務を経験している方、もしくはFASでバリエーションや財務DDの経験がある方です。
PEファンドでは買って売ることがメインの業務になるため、こうした経験を一部でも持っていることが望ましいとされています。
アドバイザリー側とプリンシパル側と言われるPEファンドでは行動のベースが全く異なりますが、M&A業務を理解していないと務まらない仕事のため、FASやM&Aアドバイザリーの出身者は非常に重宝される傾向にあります。
特に30代前半までの若手は、PEファンドの投資担当者として採用されるチャンスが非常に高いと言えます。
また、コンサルティングファーム出身の方々も非常に優秀な人材が多く、バリューアップの面で貢献が期待できるため、数値の知識やM&Aの実務経験がない方でもポテンシャル枠で採用されるケースもあります。
ただし、財務モデリングのスキルは必須とされ、多くのPEファンドでは採用プロセスに財務モデリングのテストを入れています。
最近は本や動画を通じて、学ぶチャンスはいくらでもあります。「入社してから頑張ります」という姿勢では採用されないため、採用プロセスの段階で独学でも財務モデリングのスキルを身につけておく必要があります。
FASやM&Aアドバイザリー経験者を中心に、コンサルファーム出身者も一部採用するのが多くのPEファンドの採用スタンスです。未経験者が多いため、20代から30代前半の方を求めるファンドが多いものの、35歳ぐらいまではOKとするファンドもあります。
一方で、事業会社でM&Aに携わっている方のニーズはあまり高くありません。プロフェッショナルファームでクライアントワークをしっかり行っている方が、求められるポジションになっています。
PEファンドの投資担当者の年収
ファンド間で年収には大きな差はありません。
報酬の内訳としては、基本給に加えてインセンティブが支給される場合もあります。また、ファンドには「キャリー」と呼ばれる独自の報酬制度があり、これはファンドのパフォーマンスに応じて内部のメンバーに支払われます。
しかし、一部のファンドでは若手にはキャリーが支払われない場合もあります。
ただし、若手の方々には、報酬よりもPEファンド業界で専門性を高めることを重視することをおすすめします。
PEファンドの投資担当者は、M&Aや企業のバリューアップ、会社運営など幅広い業務に携われるうえ、労働人口も限られた希少性の高いポジションです。
報酬も大事ですが、PEファンド業界で投資担当者としてスキルを高め、実績を積むことで自身のキャリアが広がっていきます。
将来的にディレクターやパートナーのポジションに就けば、キャリーも含めて報酬が大幅に増えるファンドも多く、資産形成という意味でも非常に大きなチャンスのある業界と言えます。
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