転職ノウハウ
商事法務とは|契約法務との違いや重要なポイントを解説
目次
この記事では、商事法務の業務内容や契約法務との違いを紹介しています。
商事法務の業務における重要なポイントについても分かりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
商事法務とは
商事法務とは、企業法務の一分野で、主に企業の内部統治や運営を対象とする業務を指します。
組織を適切に維持するためには、経営に関わる意思決定や株主への情報開示を法的ルールに沿って進めることが不可欠です。
株主総会や取締役会の準備・運営では会社法で定められた手続きを理解し、正確に実行する必要があります。
子会社設立のように新たに法人を立ち上げる場合は、商事法務が法定の手順を踏んで定款や各種規程を整備します。商事法務の業務は社外への信頼確保にも直結するため、常に最新の法改正を把握する姿勢が欠かせません。
法的側面から企業をサポートし、円滑な事業活動を支えるのが商事法務の責務です。
商事法務と契約法務の違い
商事法務と契約法務は、業務の対象範囲が異なります。
共に企業法務を支える上で欠かせない領域であり、商事法務は「内部向け」、契約法務は「外部向け」の業務が中心です。
商事法務と契約法務の違いを、業務内容を中心に解説します。
商事法務
商事法務は、企業活動の基盤である組織体制を法的に保全し、経営判断をスムーズに行うための下支えを担っています。
企業の円滑な組織運営を法的にサポートし、株主総会や取締役会の運営をはじめとする組織面の整備を担う「内部向け」の側面が強い法務です。
具体的には、株主総会や取締役会を開催する際の招集手続き・議案作成・議事録の作成などを実施します。経営陣の意思決定に際しては、法的リスクを見極める立場から意見を提示し、必要に応じて社内規程を整備しながら内部統制を強化します。
商事法務の担当者は、会社法・金融商品取引法・証券取引法など、常に最新の法改正や判例動向をウォッチし、経営判断に影響を及ぼすリスクを早期に察知するスキルがが必要です。
企業運営の基礎を盤石にする上で、商事法務は重要度の高い業務を担います。
契約法務
契約法務は、企業が外部の取引先や顧客と締結する契約関係を法的視点から支え、トラブルを未然に防ぐと同時に円滑なビジネスを促進する役割を果たします。
契約書の作成や交渉を通じて法的リスクを抑制する「外部向け」の業務が中心です。
契約書の作成・審査や交渉を通じて法的リスクを最小限に抑えることが主な役割です。
法的根拠は民法・商法・各種契約関連法規など多岐に渡るため、幅広い分野に通じた専門家としての対応力が求められます。
企業の利益を守りつつ取引先との良好な関係を維持するには、契約法務の慎重な検討と的確な助言が不可欠です。
商事法務の主な業務内容
商事法務の業務は多岐に渡り、企業の内部統治や組織運営を円滑に行うための専門知識が必要です。
法令遵守はもちろん、ステークホルダーとの信頼関係を築く上でも重要な役割を担います。
商事法務の代表的な3つの業務内容を紹介します。
株主総会や取締役会の準備・運営
株主総会と取締役会は、企業における最高意思決定と業務執行の中枢を担う機関であり、会社法に定められた厳格な手続きに沿って運営されなくてはなりません。
例えば、会社法では株主総会の招集通知の発送時期や議決権行使の方法、議事録の作成など、細部にわたってルールが定められています。商事法務の担当者は会社法を深く理解し、株主総会や取締役会を支障なく準備・運営することが必要です。
また、株主総会にて質疑応答に対応するほか、取締役会の場で経営判断に関する法的助言を行う場合もあります。株主総会や取締役会の運営は、企業のコンプライアンス体制を維持し、株主やステークホルダーからの信頼を得る上でも非常に重要な業務です。
株式関連業務
新株発行、自己株式の取得・処分など、株式に関する手続きを適切にサポートすることも業務の1つです。
株式に関する手続きは、会社法や金融商品取引法など複数の法律によって規制されています。
例えば、新株発行においては、株主割当や第三者割当・公募など、発行方法に応じた手続きや情報開示が必要です。自己株式の取得・処分についても、取得価格や方法・処分目的などに制限が設けられています。
株式関連の業務は企業の財務戦略や経営戦略に深く関わるため、商事法務担当者には高度な専門知識と実務経験が欠かせません。
株式管理を通じて、企業は資金調達や経営の柔軟性を高めると同時に、市場や投資家からの信用を確保しやすくなります。
組織再編に関する手続き
合併や会社分割、事業譲渡などの組織再編は、経営戦略の一環として大きな意思決定に関わるイベントです。
組織再編には、会社法や独占禁止法といった法規制が複雑に絡むため、商事法務の専門家によるサポートが必須です。
合併の場合は、株主総会の特別決議や債権者保護手続き、独占禁止法上の届出などが求められます。会社分割や事業譲渡においても、事業の承継や労働契約の承継・知的財産権の移転など、様々な法的問題が発生しかねません。
商事法務は再編スキームの検討から関連機関との協議や届出まで一貫して対応し、企業が法的リスクを回避しながらスピーディに事業再編を進められるよう支援します。
手続きを適切に行うことで企業の事業ポートフォリオを最適化し、競争力の強化を図るのが業務の1つです。
商事法務の業務における重要なポイント
商事法務の業務遂行にあたっては、いくつかの重要なポイントがあります。
特に重視されるポイントを3つ紹介します。
法令遵守の徹底
企業が社会的信用を維持・向上させるために、法令遵守は避けて通れない必須要件です。
株主総会や取締役会といった内部機関の活動は、会社法をはじめとする関連法規に則って行われなければなりません。
例えば、株主総会で決定された議案に不備があると決議そのものが無効または取消しとなる恐れがあり、企業活動に重大な影響を及ぼしかねないため、注意が必要です。
また、会社法は法改正が頻繁に行われる分野であり、法改正へ迅速に対応することも重要です。
商事法務担当者は常に最新の法改正情報を収集し、社内規程や契約書など企業活動にまつわる様々な対象へ適切に反映させなくてはなりません。
法令遵守のため、コンプライアンス体制の構築・運用も欠かせない業務です。内部統制システムの構築や従業員向け研修を通じて、組織全体の法令遵守意識を高めることも大切です。
商事法務の取り組みにより、リスクを最小限に抑えながら企業の信頼性を継続的に確保できます。
コーポレートガバナンス強化と透明性の確保
企業が持続的に成長するには、コーポレートガバナンスの強化と透明性の高い情報開示が重要です。
ガバナンス体制を整えると投資家や株主の安心感が高まり、市場からの評価向上に繋がります。また、リスク管理体制を構築すれば予期せぬ事態にも迅速かつ適切に対応でき、企業価値を損なわずに済むでしょう。
具体的には、取締役会の構成や役割、内部統制システムの構築、情報開示の充実などが挙げられます。
ガバナンス強化と情報公開の透明性を高める姿勢を示すことで、社内外のステークホルダーからの信頼感を一層強固にできます。
高度なコミュニケーションスキル
商事法務は企業内外の多様なステークホルダーと連携し、法的リスクを管理しながら事業を進めるため、法律知識だけでなく、高度なコミュニケーションスキルが不可欠です。
例えば、社内の他部署・事業部に対して、法的観点からのアドバイスをする際は、法的リスクを分かりやすい言葉で伝える必要があります。専門用語を並べるのではなく、具体例や事例を交えつつ要点を噛み砕いての説明が大切です。
弁護士や会計士などの外部専門家とは円滑な情報共有を通じて協働し、訴訟対応やコンプライアンス強化を進めます。それぞれの専門分野の知識を尊重しつつ、共通認識を持つことで、コンプライアンス体制の強化や迅速な問題解決が可能です。
商事法務担当者の適切なコミュニケーションは、関係者との良好な関係構築と業務円滑を支える重要な原動力です。
まとめ
この記事では、商事法務の概要や契約法務との違い、主な業務内容などを解説しました。
商事法務は、企業内部の安定的な運営を支える中核的な役割を担っています。
高度な専門知識に加え、様々な関係者と円滑なコミュニケーションを図りながら業務を遂行する能力が求められる、責任とやりがいのある仕事です。
ビジネス環境の変化や法改正に柔軟に対応し、社内外の関係者との連携を深めることで、企業価値の向上と持続的な成長を目指せるのが商事法務の魅力です。