転職ノウハウ

監査法人とは|主な仕事内容や転職するポイントを解説

目次

この記事では、監査法人の仕事内容やコンサルティングファームとの違い、監査法人へ転職するポイントなどについて解説します。

 

併せて、4大監査法人(Big4)と呼ばれる各監査法人の概要についても紹介していますので、監査法人への転職を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

監査法人とは

監査法人とは、公認会計士法に基づいて設立された組織で、企業の財務諸表を監査する重要な役割を担っています。主な業務は、企業が適正な会計処理・決算を行っているかを証明することです。監査法人の存在は、日本経済の信頼性を保つ上で欠かせません。

 

金融庁の「令和6年版 モニタリングレポート」によると、日本の監査法人の数は2024年3月末時点で287法人となっています。監査法人の数は近年増加傾向にあり、2023年4月から2024年3月までの1年間で、7法人の増加がみられます。

 

また、監査法人の設立には5人以上の公認会計士が必要です。監査業務は公認会計士の独占業務ですが、大規模な監査法人では公認会計士以外のスタッフも働いています。

 

監査法人の仕事は社会的意義が大きく、責任感が求められる重要な仕事です。

監査法人の主な仕事内容

監査法人の主要な業務は企業の財務諸表を監査することであり、企業の財務情報の信頼性を確保するために不可欠です。

監査法人は、企業が適正な会計処理・決算を行っているかを第三者の目線でチェックします。

 

ここでは、監査法人の主な仕事内容について解説します。

監査業務

監査法人の主要な業務である「監査業務」は、企業の財務諸表の適正性を公認会計士が公正な立場でチェックし、財務諸表に誤りや粉飾がないか保証することです。

 

適切な監査により、企業の財務情報の信頼性が担保され、市場の透明性が確保されます。

 

法律上、最終事業年度の資本金が5億円以上、または負債が合計200億円以上になる企業は、監査を義務付けられています。監査によって企業の財務状況や経営状態の透明性を高めると、利害関係者からの信頼度が上がり、経営課題の発見・改善につなげることが可能です。

 

監査業務の流れについて、4つのステップに分けて解説します。

1.予備調査の実施

予備調査は、監査の実施を効率的に行うための事前調査です。

 

監査対象企業の事業内容・経営環境・会計システムを把握し、企業の業界動向・経営戦略・内部統制システムの情報を収集・分析することで監査対象への理解を深めます。

 

予備調査は、監査上のリスクを特定し、効率的な監査計画の基礎を作る段階です。得られた情報は、監査全体の方向性を決定する要素となります。

2.監査計画の立案

監査計画の立案は、予備調査結果をもとに行われるステップです。

 

企業の規模や複雑さ・組織の管理力・内部統制の整備状況を分析します。リスクの高い箇所に焦点を当て、具体的な監査手続き・時間配分・担当者を決定します。

 

限られた時間と資源で高品質な監査を実現するため、計画段階での準備が重要です。

3.監査の実施

監査実施段階では、立案した計画に基づき監査手続きを行います。

 

監査人は企業の帳簿や証憑書類を詳細に確認し、必要に応じて経営者や従業員へのヒアリングを実施します。

 

残高確認・実地棚卸の立会・分析的手続き・ITシステムの信頼性確認など、財務諸表の適正性を判断するための証拠収集が目的です。

4.監査報告書の作成

最後に、収集した証拠を評価し、財務諸表の適正な作成について意見を表明する監査報告書を作成します。

 

報告書には監査意見・監査の範囲・監査人の責任・経営者の責任などを記載します。

 

監査意見は、以下の4種類です。

 

・無限定適正意見
・限定付適正意見
・不適正意見
・意見不表明

 

監査報告書により、財務諸表の信頼性が保証されます。

アドバイザリー業務(コンサルティング業務)

監査法人は、監査業務以外の業務として、アドバイザリー業務(コンサルティング業務)を行っています。

 

アドバイザリー業務とは、監査を通じて培った専門知識や経験を活かし、企業の経営に関する幅広いアドバイスを提供することです。

 

監査の客観性や独立性を保つため、原則として監査先企業に対して同時に監査業務とコンサルティング業務を提供することはできません。

 

以前は、監査法人がM&Aアドバイザリー業務なども行うことがありました。近年、M&Aアドバイザリー業務などは、監査業務の独立性を確保するための措置として、監査法人から分社化された別法人(FAS)が行う傾向です。

 

非監査業務も監査業務と同様、社会的に重要な役割を担っています。

監査法人とコンサルティングファームの違い

監査法人とコンサルティングファームは似通っている部分もありますが、実際には業務内容や働き方、年収の面で大きく異なります。

 

監査法人とコンサルティングファームの違いを紹介します。

業務内容

監査法人のアドバイザリー業務と、コンサルティングファームのコンサルティング業務では、業務の幅や対象となるクライアントの規模が異なります。

 

監査法人のアドバイザリー業務は、内部統制の構築支援・会計システムの導入・コンプライアンス体制の整備などが含まれる「守りのコンサルティング」です。主に企業の財務や会計に関連する分野でのアドバイスを中心に行います。

 

一方、コンサルティングファームの「攻めのコンサルティング」には、経営戦略の立案・業務プロセスの改善・新規事業開発などが含まれます。より幅広い経営課題に対応し、企業の成長や競争力強化の支援が主たる業務です。

 

同じコンサルティングに括られる業務であっても携わる内容が異なります。自身の興味や適性に応じて、どちらの分野でキャリアを築くか選択しましょう。

働き方や年収

監査法人とコンサルティングファームでは働き方や年収が大きく異なります。

 

一般的な傾向として、監査法人はコンサルティングファームより残業時間が少なめで、ワークライフバランスの取れた働き方をしやすい職場環境です。コンサルティングファームは、クライアントの要望や案件の進捗状況によって労働時間が大きく変動します。

 

年収面では、一般的にコンサルティングファームの方が監査法人よりも高い傾向にあります。これは、コンサルティングファームの業務が高度な専門性と創造性を求められ、長時間労働の対価としての側面もあるためです。

 

業務内容と併せて、それぞれの働き方や年収もふまえて転職を検討することで、長期的なキャリア満足度を高められます。自分のライフスタイルや価値観に合った選択をしてください。

4大監査法人(Big4)とは

4大監査法人(Big4)は、世界的に規模が大きく、影響力のある監査法人のグループを指します。

 

日本における4大監査法人は、EY新日本有限責任監査法人、有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、PwC Japan有限責任監査法人です。

 

これらの法人は国際的なネットワークを持ち、グローバル企業の監査に強みを持っている点が特徴です。

ここでは、4大監査法人について説明します。

EY新日本有限責任監査法人

EY新日本有限責任監査法人は、グローバルネットワーク「EY」の一員として、高品質な監査の提供に力を入れています。

 

上場企業の監査では国内最大のシェアを誇り、信頼性と専門性が高く評価されている監査法人です。1967年に日本初の監査法人として設立されました。

 

デジタル技術を活用した監査の革新に注力し、AIやデータ分析を用いた先進的な監査手法を採用しています。クライアントである企業のニーズに応じて、監査だけでなくアドバイザリーサービスも提供し、総合的なサポートを行っています。

有限責任あずさ監査法人

有限責任あずさ監査法人は、「KPMG」のメンバーファームとして、グローバルな視点と高い専門知識を組み合わせたサービスを提供しています。

 

特に、監査品質の向上と人材育成に力を入れ、高品質な監査の実施と多様な専門サービスの提供に注力し、業界をリードする存在です。テクノロジーを活用した監査手法の開発や、サステナビリティ関連のサービス提供にも積極的に取り組んでいます。

 

社会貢献活動にも精力的で、教育支援や環境保護活動などに取り組んでいる点も特徴です。

有限責任監査法人トーマツ

有限責任監査法人トーマツは、「デロイト トウシュ トーマツ リミテッド(DTTL)」のメンバーファームとして、幅広いサービスを提供しています。

 

1968年に日本初の全国規模の監査法人として設立され、現在では全国約30の都市にネットワークを持っています。

 

監査業務だけでなく、リスクアドバイザリーやコンサルティングサービスも提供する総合的なプロフェッショナルファームです。

 

「Quality first」のスローガンのもと品質を重視して、企業の適正な財務報告と内部統制の向上資本市場の信頼性を担保し、発展に貢献しています。

PwC Japan有限責任監査法人

PwC Japan有限責任監査法人は、「プライスウォーターハウスクーパース(PwC)」のグローバルネットワークの一員です。

 

高品質な監査サービスを提供し、テクノロジーを活用した監査手法の開発や、サステナビリティ関連の監査・アドバイザリーサービスに力を入れています。AIやデータ分析を活用した監査プロセスの効率化や、ESG情報の保証業務への取り組みも積極的です。

 

監査業務を中心に総合的なプロフェッショナルサービスを提供し、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というパーパス(存在意義)の実現を目指しています。

監査法人に転職するには

監査法人への転職は、会計・監査のプロフェッショナルを目指す人にとって魅力的な選択肢です。ただし、多くの場面で特定のスキルや資格が求められることがあります。

 

監査法人へ転職するポイントを紹介します。

公認会計士の資格が必要

監査法人は、業務の性質上公認会計士の有資格者が優先的に採用される傾向があるため、転職を検討する際は、原則として公認会計士の資格が必要です。

 

公認会計士の資格があれば、未経験からでも監査法人に転職するチャンスはあると言えます。

 

また、会計業務の未経験者に比べて、実務経験がある人は採用が有利になる可能性があります。特に、企業の経理部門や税理士事務所での勤務経験は、監査法人での業務に直結するため評価されやすいキャリアです。

 

資格を持っていない方でも、ITや特定業界の専門知識を持つ人材など、監査業務をサポートする役割で採用されるケースもあります。

監査法人の採用動向を確認する

監査法人への転職は、採用動向にあわせた転職活動が求められます。
4大監査法人と中小監査法人では、採用の傾向が異なります。

 

4大監査法人は、グローバル企業の監査を担当することも多いため、高度な専門性と語学力が求められることの多い点が特徴的です。一方、中小監査法人は、公認会計士としての基本的なスキルを重視する傾向です。

 

自分が目指す監査法人の採用動向を把握し、必要とされるスキルや採用の情報をキャッチして準備しましょう。各監査法人の公式サイトや採用情報を定期的にチェックし、求められる人材を把握して転職活動を行うことが重要です。

コンサルティング業界に強い転職エージェントを利用する

コンサルティング業界に強い転職エージェントを活用することで、監査法人への転職を効率よく進めることができるでしょう。

 

また履歴書や職務経歴書の添削、面接対策など、個人での転職活動ではカバーするのが難しい部分のサポートを受けられるのも魅力です。

 

正しい情報を比較検討することで、より良い転職先を見つけられる可能性が高まります。

まとめ

この記事では、監査法人の仕事内容やコンサルティングファームとの違い、4大監査法人などについて解説しました。

 

監査法人は社会的に重要度が高く、近年増加傾向にあります。しかし、自分に合った求人を見つけるのが難しい場合もあります。

 

監査法人への転職を検討する場合は、コンサルティング業界に強い転職エージェントのサポートを受けるのがおすすめです。非公開求人を保有しているので、自分に合った求人を紹介してもらえることがあります。

 

自分に合った転職先を見つけるために、転職エージェントを活用してみてはいかがでしょうか。

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