企業インタビュー

PwCアドバイザリー合同会社 企業インタビュー|会計の専門家から事業再生における伴走者へ転身した理由と業界ならではのやりがい

PwC Japanグループにおいて、経験豊富なプロフェッショナルがグローバルネットワークを駆使して、クライアントの新たな価値創造に貢献するディールアドバイザリーサービスを提供しているPwCアドバイザリー合同会社(以下、「PwCアドバイザリー」)。

 

今回は野村総合研究所にてコンサルタントキャリアを経験し、企業再生支援機構(現、地域経済活性化支援機構)において企業再生業務経験を持つ弊社代表取締役社長の大原が、会計士資格を持ち、監査法人で働いた後、PwCアドバイザリーに転職し企業再生・事業再生業務を実施している岩瀬昌直マネージャーにお話を伺いました。

PwCアドバイザリー合同会社 岩瀬 昌直氏

 

プロフィール
2018年にPwCアドバイザリー合同会社に中途入社。

 

以降、一貫して事業再生チームに所属し、事業再生局面における事業者様に対する事業計画策定、金融機関・スポンサー交渉等の各種事業再生支援の他、経営管理高度化支援や業務改善支援など様々な経験を積む。

 

PwCアドバイザリー入社以前は、主に大手監査法人にて、国内企業向けに会計監査・内部統制監査業務に従事。公認会計士の資格を有する。

FAS(Financial Advisory Services)における企業再生・事業再生業務とは

業績不振によりキャッシュ不足、債務超過転落リスク、借入金返済不能リスクを抱える企業に対して、それらリスクを回避するために同時並行で様々な施策を立案・実行支援する業務です。

 

具体的には、以下の業務をクライアント企業と一体となり実施しています。

 

・資金繰り表の作成によるキャッシュ状況の把握

・キャッシュ確保のための不採算・ノンコア子会社・事業売却・撤退、工場・拠点閉鎖

・不動産・株式等固定資産の売却

・損益計算書改善に向けた費用削減(ビジネスのみならず、リストラ、給与カット等労務面含む)

・営業利益回復・成長計画、これらを含んだ企業再生計画の作成と計画をベースに借入金返済タイミング・金額調整に向けた銀行交渉

・必要に応じて私的整理・法的整理の検討・実施等業務

企業の課題解決に関与したい

大原:
最初に岩瀬様のキャリアについて教えていただけますでしょうか?

 

岩瀬氏:公認会計士の資格を取得した後に、監査法人において会計監査の業務を5年ほど行いました。

 

その後、コンサルティングファームを1社挟み、PwCアドバイザリー合同会社へ転職して6年ほどになりますが、入社以来一貫して事業再生プロジェクトに関与しています。

 

 

大原:
会計士として5年ほど経験を積まれ、仕事の面白さを実感できるタイミングでもあったかと想像しますが、監査法人からコンサルティングファームという職種変更を含む転職をされた経緯について教えていただけますでしょうか?

 

岩瀬氏:監査法人時代は、主に国内事業会社、中堅・中小企業を中心に業種は幅広く、小売りや製造業など多種多様な企業が監査対象でした。

 

おっしゃる通り、5年ほど会計士として経験を積んだことで、会計監査のやりがいや楽しさを感じていました。

 

ただ、私はもともと会計監査よりもビジネスに興味があり、会計監査の場合、立場上数字を詳細に見て企業の課題を感じることはあっても、その課題解決に向けた施策を本気で議論・意思決定することに関わることはありません。

 

そのため、数字を見たうえで企業課題の解決に深く関与する業務をしたいと考えたのが転職のきっかけとなります。

 

特に当時は、業績が芳しくない企業の会計監査を担当することもあり、業績回復に対する施策について、自分なりに思うことが多々ありました。

 

監査対象企業に長く関与すると組織上の課題等も把握できるようになりますが、あくまで監査法人としての立場であり、数字をもとに企業の課題解決に向けた意思決定に関わることはできず、様々な話しだけ聞いて終わることが殆どであったため、「何か自分が貢献できないか」という気持ちを強く持つようになりました。

 

大原:
そのような思いがあったことで、転職先はビジネスコンサルティングの領域を選んだのですね。

 

岩瀬氏:そうです、ただ、1回目の転職先は新規事業の立ち上げ、DX戦略、BPRなどを行うようなコンサルティングファームだったこともあり、監査法人時代に培った経験や専門性を生かすのは容易ではありませんでした。

 

当時利用していた転職エージェントの方から、会計士としての経験を生かした方が良いとアドバイスをいただき、あらためて自分の武器が数字関連であることを認識できたこともあり、コンサルティングファームの中でその武器を活用しながら企業の課題解決・意思決定に深く関与するというポジションを探し、その結果、当社に転職することを決めました。

 

大原:
新たに転職先を探すにあたって、FAS、特に事業再生業務を希望されていたのでしょうか?

 

岩瀬氏:いいえ、存在はなんとなく知っていましたが、転職エージェントの担当者から紹介していただくまで詳細業務は知りませんでした。

 

ただ、詳しく話しを伺うと、事業再生業務は自分の武器である数字をフル活用しながら企業の課題解決や意思決定の支援をするといった内容で、FASにおいては財務デューデリジェンス、バリュエーション等、様々な業務がありますが、事業再生がやりたかったことに近いと感じました。

目の前で困っている人の助けになれるのが魅力

大原:
入社されて6年が経過している中、実際に入社されてからはいかがでしたでしょうか?

 

岩瀬氏:正直にお伝えすると、仕事において最初はまったく通用しなかったと考えています。

 

個々のコンサルタントの仕事に対するマインド、仕事の進め方・動き方、成果物や求められているもの等、監査法人時代と大きく異なっており、仕事内容自体は入社前のイメージそのものでしたが、まったく通用しないという現実を突きつけられました。

 

当然、監査法人時代に培った数字関連のスキルは活用できたのですが、数字は手段であり、本質的な目的であるクライアントの事業再生に向けた施策立案・実行部分で全く貢献できませんでした。

 

大原:
業務をキャッチアップする時期はどの程度続いたのでしょうか?

 

岩瀬氏:半年程度はプロジェクトにおいて貢献できない時期が続きましたが、入社から1年ほど経過してからは徐々に貢献できるようになったと感じました。

 

大原:
私も最初の転職においてコンサルティングビジネスをしていた野村総合研究所から自己資金投資ビジネスをしていた大和SMBCPI転職しましたが、岩瀬様と同じく当初1年程度は全く通用しませんでした。

 

投資業務とビジネスコンサルティング業務は全く異なり、自分が投資業務に貢献するスキルを持ち合わせていなかったので、少しでもチームに貢献するために毎日コピーもしていました。それと同じような感覚だと推測しますので、気持ち理解できます。

 

具体的に、最初はどのようなプロジェクトに参加されたか教えていただけますでしょうか?

 

岩瀬氏:最初のプロジェクトは、オペレーションリストラクチャリングと呼ばれる、在庫削減に関する業務でした。

 

当時この分野はまだ日本では世の中に浸透しているテーマではなかったこともあり、私自身もテーマとして全く馴染みがないのに加え、仕事の進め方、スピード感やアウトプットの質等で自分の至らなさを痛感する日々となりました。

 

また、監査法人時代に監査資料は作っていましたが、クライアント向けの資料を作る経験がなかったため、非常に苦労したことも覚えています。

 

大原:
本業界・業務経験者でなければ、岩瀬様同様、業務のキャッチアップに一定の苦労をする方が多いと推測されますが、岩瀬様個人において、OJT含めた教育プログラムで役立った点ありましたでしょうか?

 

岩瀬氏:OJTに関しては様々な配慮をしてもらったと感じており、本当に感謝しています。

 

コンサルティング業界未経験かつ、事業再生業務を実施するには専門知識の幅が狭かった自分に合った内容・レベル・スピード感のプロジェクトにアサインしてもらい、粘り強く成長を待ってもらえました。

 

また、スキルの幅を広げるために、敢えて期間が長いプロジェクトではなく、3か月程度で終わるプロジェクトを中心にアサインしてもらうことで、様々なテーマのプロジェクトを経験でき、専門知識の広がりを持つことができました。

 

大原:
事業再生業務はクライアント企業が置かれている状況含めて、緊張感の高い大変な業務だと思いますが、一方で岩瀬様にとって大変さを上回る業務上の魅力はどのあたりになりますでしょうか?

 

岩瀬氏:事業再生業務の魅力は、一定の締め切りがある中で目の前で困っているクライアントの助けになれることです。

 

特に事業再生プロジェクトの場合は、クライアントと共に意思決定したプランが実行させる可能性が極めて高く、一定期間経過後もクライアント自身で自走しているケースが多いのも魅力です。

 

ご支援させていただいたクライアント企業がその後どうなったのか自然と追ってしまいますし、その際に、業績が伸びていたり、採用が増えたりしていると本当に嬉しく感じます。

 

それに加えて、事業再生という目的を達成するためには何でもやるというスタンスであるため、学びの機会が多いことも魅力のひとつです。現段階で引き続き自分のスキルが増えており、学ぶ喜びや成長を実感できる部分も魅力と感じています。

 

大原:
反対に一定程度業務経験をした中で、事業再生業務の大変さについてはどのように考えられてますでしょうか?

 

岩瀬氏:お客様のおかれている状況がシビアなケースが多く、キャッシュの関係上、一定程度締め切りがある中で様々なことを迅速に実施し効果を創出する必要があることは最も大変な点と感じています。

 

入社直後は相当苦労したものの、様々なプロジェクト経験を重ねることで、クライアント側で想定外の事象が起きても、ポジティブな考え方で取り組めるようになりました。

 

そして現在は、迅速に進めつつ、質の高いアウトプットを考えて進められるほど幅も広がり、クライアントに貢献できている感覚を持てるようになりました。

 

大原:

会計士資格を保有し、業務経験をしていることによるメリット・アドバンテージはどのように感じていますでしょうか?

 

岩瀬氏:会計士として長年財務数値を見続けてきたことにより、PL/BS/CF改善が目的である事業再生業務において、事業再生に向けて必要な施策と創出される効果数値が連動して再生につながる感覚をつかみやすいのが最も強いアドバンテージと感じています。

 

また、会計士の経験が、ビジネスの動きを財務モデルに落とし込むことに活かせており、それが自身の強みになって、現職で質の高い財務モデルの構築ができています。

 

別の観点では、事業再生業務において、財務モデル、バリュエーション、契約交渉、ビジネス、人事労務等々、非常に幅広い専門テーマに関する知識が求められますが、公認会計士試験で様々な科目を勉強していたため、いろいろな専門テーマをキャッチアップする力は非常に強いと感じます。

本気になって立ち向かうことで得られる経験がある

 

大原:
改めて事業再生のアドバイザーとして、得られる経験とやりがいを教えていただけますでしょうか。

 

 

岩瀬氏:クライアント企業が厳しい状況にあるなか、自分が深く支援させていただいた後に企業・事業が存続・成長するステージに関わることができるのは大きなやりがいです。

 

また、クライアント企業が厳しい状況に陥っており、切羽詰まった状況での支援になることで得られる経験もあります。追い込まれている状況だからこそ、クライアント企業のために何とかしたいという気持ちがよりいっそう強くなります。自分も本気になって立ち向かうことで得られる経験があることは事業再生という分野ならではと感じています。

充実した教育環境と未経験者への行き届いた配慮

大原:
OJTや会社の教育環境に関してはいかがでしょうか?

 

岩瀬氏:全体的に教育環境が非常に充実しています。

私の場合、OJTに関しては前述したように少しずつ慣れていけるよう会社が様々な工夫をしてくれました。

 

また、研修プログラムも多種多様にあり、法律・ガイドライン関連や過去プロジェクトのプラクティスがシェアされる仕組みになっています。これら教育手段を通じて、各種専門的知識を効率よくキャッチアップすることが出来ています。

 

大原:
特に未経験者の方向けの教育プログラムなどもあるのでしょうか?

 

岩瀬氏:はい、あります。

ナレッジマネジメント含めて教育・研修は会社として非常に力を入れています。私自身、最初の1年はさまざまな研修を受けましたが、いろいろと整備されており素直に「すごいな」と感じました。

 

研修内容も多種多様で、過去のプロジェクトの方法論などがeラーニングやスライドなどで整備されているので、未経験の皆さんにとって大いに役立つ内容となっています。

 

大原:
貴社事業再生チームは100名以上のメンバーが所属していますが、eラーニングのような個々で学ぶ研修だけでなく、対面での講義などもあるのでしょうか?

 

岩瀬氏:実際に現場でプロジェクトを担当している方が、ナレッジを積極的にシェアするという方針のもと、対面での研修を行っています。

 

勉強会を個別にやろうというよりは、全体的にナレッジシェアをしていこうという動きが強く、実際に現場で業務をしている方々が研修チームも兼任しているため、非常に充実した内容となっています。

 

研修自体は現場のナレッジ、法的なもの等々、様々なテーマについてシェアされるので、自分にとって大きくプラスになりましたし、6年程度経過した今でも研修・教育より得るものは多々あります。

 

大原:

岩瀬様は監査法人からコンサルティングファームに業務内容を変更し6年経ちますが、どんな志向の方がコンサルティングファーム・監査法人それぞれに合っていると感じますでしょうか?

 

岩瀬氏:監査法人で5年程度勤務して感じたのは、監査法人において大半は定例業務となりますが、一部新しい会計処理を考える局面があり、この部分に興味が強い方は監査法人業務に適していると感じています。

 

私自身は、監査法人に入社し、しばらくの間はスタッフワークを身に付けることに懸命でした。一定期間が過ぎ、ある程度業務を覚え、その中でも売上分析などは興味深かったです。

 

さらに専門性を高めるため、テクニカルな会計処理にしっかりアプローチすることを選ぶ局面もありましたが、個人的には厳しい状況のクライアントに対して直接サポートする等、監査法人とは異なる付加価値を提供したいと感じました。

事業再生を通じて日本経済の再興や地域社会に貢献したい

大原:
事業再生業務は、一定締め切りがあるので業務負荷においてプロジェクトの進捗次第で濃淡があると思いますが、最近入社された若い方などは、どのような働き方をされているのでしょうか?

 

岩瀬氏:ほどよく働きたいという方もいれば、タフな働き方も厭わないという考え方をされている方もいます。マネージャーとして大事にしているのは、働き方を一律に定めるのではなく、ひとりひとりに合わせたポイントを押さえてあげるのが良いように感じています。

 

また、業務内容上、瞬間風速的に負荷が高くなる時は当然にあるのですが、コンサルティングファームの良いところで定例業務がほぼないため、他のタイミングで調整を入れることができるので、全体としては業務時間を一定範囲内でコントロールできています。

 

大原:
今後のキャリアパスについて、お考えになられていることを教えていただけますでしょうか?

 

岩瀬氏:本日インタビューを受けて話をしながら改めて感じましたが、「誰かのために」という想いが強くあるため、引き続きアドバイザリーの立場でキャリアを重ねつつ、事業再生という分野を通じて日本経済の再興に貢献したいと考えています。

 

また、将来的には自分が生まれ育った地元や今までお世話になった地域社会など、自分と関係のあった方々に貢献したい気持ちもあります。

 

大原:
最後にあらためて、監査法人から貴社事業再生コンサルタントに転職してよかったことを教えていただけますでしょうか?

 

岩瀬氏:事業赤字が継続し、企業存続の危機の中、構造改革を支援した結果、企業・事業が存続・成長することに関われることの魅力は非常に高いと感じています。

 

また、この6年間で個人的な成長実感を強く感じています。

具体的には、転職直後は全く通用しなかったところ、段々と資料の修正も少なくなり、クライアントとしっかり話しができるようになり、チームメンバーを動かせるようになり、クライアントに大きく貢献できるようになり、事業再生コンサルタントとして大きく成長することができました。

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