企業インタビュー
PwCアドバイザリー合同会社 企業インタビュー|クライアントの存続を左右する経営課題に取り組む企業再生のリーディングファーム
PwC Japanグループにおいて、経験豊富なプロフェッショナルがグローバルネットワークを駆使して、クライアントの新たな価値創造に貢献するディールアドバイザリーサービスを提供しているPwCアドバイザリー合同会社(以下、「PwCアドバイザリー」)。
今回は野村総合研究所にてコンサルタントキャリアを経験し、企業再生支援機構(現、地域経済活性化支援機構)において企業再生業務経験を持つ弊社代表取締役社長の大原が、PwCアドバイザリーにおいて企業再生・事業再生業務を実施している野村泰史パートナーにお話しを伺いました。
大原は企業再生支援機構時代に野村様と同じ案件を実施していたことがあり、当時の経験談も含みながら企業再生・事業再生の価値・魅力についてお聞きしました。
PwCアドバイザリー合同会社 野村 泰史氏
プロフィール
シンクタンク系コンサルティングファームにて事業戦略立案、業務改革(BPR)、ITを利用した新規事業開発など、数多くの案件に従事。2008年にPwCアドバイザリーの前身の法人に入社し現在に至る。
入社後は事業再生部門にて、一貫して事業再生・再編業務に従事。事業再生計画策定やスポンサー探索、金融機関調整などを行い、数多くの企業の再生を支援してきている。
FAS(Financial Advisory Services)における企業再生・事業再生業務とは
業績不振によりキャッシュ不足、債務超過転落リスク、借入金返済不能リスクを抱える企業に対して、それらリスクを回避するために同時並行で様々な施策を立案・実行支援する業務。
具体的には、資金繰り表の作成によるキャッシュ状況の把握、キャッシュ確保のための不採算・ノンコア子会社・事業売却・撤退、工場・拠点閉鎖、不動産・株式等固定資産の売却、損益計算書改善に向けた費用削減(ビジネスのみならず、リストラ、給与カット等労務面含む)、営業利益回復・成長計画、これらを含んだ企業再生計画の作成と計画をベースに借入金返済タイミング・金額調整に向けた銀行交渉、必要に応じて私的整理・法的整理の検討・実施等をクライアント企業と一体となり実施する。
大原:
野村様が企業再生業務に関わるきっかけは何だったのでしょうか?
野村氏:
1999年にシンクタンク系コンサルティングファームに新卒として入社しました。
当時は新たなテクノロジーであったITを様々なビジネスに活用しようとしていた時期であったため、例えば電子マネービジネスの成長戦略構築プロジェクトや地上波デジタルのビジネスモデル構築のような、コンサルタント個人として面白く、かつ社会的意義が高いプロジェクトが多数ありました。
ただ、当然にそれ以外の通常テーマのプロジェクトも多数あり、そのようなプロジェクトを実施する中で個人的な想いとして、ビジネスコンサルタントという仕事をしているものの、クライアントの一部の事業の戦略以外は関与することができない、様々な分析やアイデアをもとに新たな提案をしても実際に実施するか否かについてのクライアントの意思決定には深く関与できないことに対して物足りなさを感じていました。
クライアントに対して必要以上に忖度せず
こうあるべきだという提案をしっかり言える、またクライアント側もそのような提案に対して真摯に検討するようなプロジェクトを多数やりたいと考え、M&Aや企業再生・事業再生のように限られた時間軸の中で緊張感の高いプロジェクトが多いPwCアドバイザリーに2008年に入社しました。
当時はリーマンショック直後ということで、企業再生プロジェクトが非常に多かったこともあり、ある企業再生プロジェクトに参加することになりましたが、その案件が後々大原さんとご一緒した案件となりました。
大原:
ご一緒した際に、PwCアドバイザリーの皆さんはクライアント経営陣と一体的にプロジェクトを実施されていたため、野村さんにとってその案件が最初の企業再生プロジェクトとは全く感じませんでした。最初の企業再生プロジェクトはどういう印象だったのでしょうか?
野村氏:
ご一緒した案件は従来経験していたプロジェクトとは全く異なり、個人的には衝撃を受けました。
メディアにインタビュー記事が掲載されるような企業の経営者と、その会社の存続のために様々な課題に向けた提案・議論をし、実際に重要な意思決定がされ、実行されていくのを目の当たりにしました。
具体的には人員削減、子会社や事業の売却・撤退等が行われました。
それでも状況は改善せず、このままでは会社が一定期間経過後倒産する可能性が高く、残された時間が長くない中で、銀行交渉やスポンサー探しに奔走するような、普通のプロジェクトでは経験できないことが目の前で次々と起きました。大変ではあるものの、提案したことが実施され会社が変わっていく実体験を通して企業再生業務にかける責任とやりがいを強く感じました。
また、企業経営において平時と有事では取るべき施策が全く異なりますが、有事の企業経営を経験しているビジネスパーソンは非常に少なく、希少な経験やビジネススキルが身につくこと、企業が生きるか死ぬかの瀬戸際で生き残りをかけてクライアントとプロジェクトを実施しているため、クライアントとの一体感は外部のコンサルタントとクライアントの一般的な関係性より遥かに強いことも魅力を感じた理由となります。
また、そのプロジェクトにおいて、ある厳しい局面で一緒に動いていたクライアントの経営者から当時30歳代前半の若手であった私に「会社は大変なことになっているが、絶対に倒産させたくない、何とか会社を助けてほしい」と切実な依頼をいただいたことは、非常に強い使命感を覚えた経験となりました。
この経験はその後も15年以上企業再生業務を続けている理由の一つとなっています。
大原:
直近は企業再生件数が再び増加傾向にあるとは聞きますが、リーマンショック直後に案件をご一緒させていただいて15年以上経ち、御社企業再生・事業再生チームにおいてその後の景気循環の中でプロジェクト数に増減があったのではないかと推測しますが、状況はいかがだったのでしょうか。
また、ご一緒させていただいた当時は企業再生のノウハウが一般的ではなかったため、貴社がクライアントと企業再生に向けたプロジェクトを始めた後は、例えば子会社・事業売却・撤退、固定資産売却、リストラの実施等、企業再生に向けて本業の立て直し以外も様々な施策を打つことができる余地がありましたが、直近は基本的なノウハウは認識されており、貴社がクライアントと企業再生プロジェクトを始める前にクライアント自身である程度やれることをやっているのではないかと推測しますが、どのような状況が多いのでしょうか?
野村氏:
おっしゃる通り、リーマンショック以降直近に至るまで企業再生件数は時期による増減が大きかったと思いますが、PwCアドバイザリーは企業再生に確かな実績があるため、全体の企業再生件数が減少したタイミングにおいても、一定数以上の企業再生プロジェクトがありました。チーム規模は継続的に拡大していますし、チームのノウハウが蓄積され続けています。
また、最近のプロジェクトの内容はおっしゃる通りで、クライアント自身が既に実行済みの施策がいくつかあり、従来と比較してプロジェクト開始後に実行できる施策の幅は狭くなっているケースが増えてはいます。
ただし、企業再生業務は突き詰めるとBS(貸借対照表)/PL(損益計算書)/CF(キャッシュフロー)を立て直すのが目的であるため、プロジェクト直後にそれらを立て直すための全社プラン作りを実行することは変わりません。プランに含まれる施策がメインビジネスの立て直し(具体的にはコスト削減、在庫削減、値上、事業戦略・営業戦略等)中心となるケースも一定数あります。
プラン作成後は借入金返済に関する銀行交渉、自己資本毀損に対するスポンサー探しをしつつ、クライアントと一体となり企業再生プランを着実に実行するという流れとなります。
大原:
私がビジネスコンサルタントから自己資金投資の投資担当として転職した際、売上~営業利益・経常利益までは理解していたものの、それ以外の例えば特別損益、CF、BS、税務、減損、繰越欠損金のような財務知識がなく、最初は非常に苦労しましたが、投資業務を実施する中でこれら様々な知識が身につき、成長を実感できました。
それと同じく、ビジネスコンサルタント経験のある方が貴社に転職した場合、スキル・知識の幅が広がり、成長を感じることができる可能性が高く、良い経験になると感じました。
野村氏:
おっしゃる通り、ビジネスコンサルタント出身の方は財務経理の知識が少ないケースが多いですが、自分自身も当社に入社した際は同じような状況でしたので、珍しいことではありません。
当社入社後、プロジェクトに参加いただく際は、公認会計士や財務デューデリジェンス経験者のメンバーからプロジェクトを進める中で様々な知識をキャッチアップできる環境となっており、個人の成長を感じることができる可能性は高いと考えています。
大原:
有事においては、財務経理以外も、例えば労務、法務、システム含めた経営課題全てに関与することとなるため、自然と幅広いスキルが身につくことになりますね。
野村氏:
はい、まさに経営そのものを体感することができると思います。
例えば、企業再生業務を遂行しているとリストラに関与することがあります。
会社・経営側としては会社が生き残るためにリストラを実行せざるを得ない状況があり、また従業員の皆さんには業績が厳しい会社で良いとは言えない条件で働き続けるか、リストラに伴うパッケージを得ることでご退職するのかご自身で決断いただくこととなります。
従業員の皆さんにとっては人生がかかっている非常に大きな決断となりますし、その決断に向けて会社としてどのようなパッケージを用意し、従業員の皆さんとどのようにコミュニケーションするかは経営課題そのものです。
リストラの話しを例に出しましたが、リストラ以外のそれぞれのテーマに対しても従業員、銀行・株主、取引先・仕入先等への影響を加味しながら強い使命感を持って会社の方向性を定める計画立案・実行を進めています。
大原:企業再生プロジェクトは期間が非常に長いイメージがありますが、いかがでしょう?
また、企業再生チームには何人程度のメンバーが在籍されていますでしょうか?
野村氏:
おっしゃる通り、2-3か月で終わるプロジェクトはほぼなく、半年~1年が中心、長くなると2、3年のプロジェクトも普通にあります。
当然フェーズごとに取り組むテーマが異なり、コンサルタントに必要なケイパビリティも変わるため、本人の希望次第ではテーマごとに人を変えることもありますし、同じコンサルタントが全てのフェーズをカバーすることもあります。
また、当チームには現段階で100名程度在籍しており、他ファームと比較して在籍メンバー数が多いため、例えば売上数千億円以上の大企業クライアントに対する企業再生プロジェクトにも対応できます。
売上が数千億円以上あると子会社数も多く、グローバルに拠点分散していることもあり、一定の人数が同時に稼働できないと対応できません。当社の場合、グローバル案件はPwCグローバルネットワークを活用し、各地域のPwCのメンバーと協働しながら実施しています。
大原:
企業再生件数は今後どのように推移すると考えていますでしょうか?
野村氏:
今後は労働人口が減り労務費が高くなる、現段階では低金利・コロナ禍の影響で企業の借入金が増大している状況下で金利上昇圧力がある、日本国内のマーケット規模は増加しないが海外向けビジネス立ち上げも容易ではない、ビジネスモデルやテクノロジーの進化で従来のメインビジネスが不要になる、というマクロ環境において、今後も一定程度の件数が発生すると考えています。
また、各業界で再編が必要と言われて久しいですが、実際にはまだ進んでおらず、更なる業界再編の流れの今後本格化する中で経営が厳しくなる企業が出てくることも想定しています。
大原:
私自身は企業再生業務を経験する中で得たスキル・経験は有事の企業経営である企業再生業務のみではなく、その後のキャリアにおける平時の企業経営においても十分有効であったと感じています。
貴社における企業再生業務の経験が今後のキャリアにどう活かせると感じていますでしょうか?
野村氏:
当社を離れたメンバーの中には、例えばベンチャー企業でCFOをしているメンバーもいます。
ベンチャー企業はステージにもよりますが、生きるか死ぬかの瀬戸際にある状況が多く、そのような状況下において、銀行やVCのような資金の出し手とコミュニケーションしながら財務強化したり、ベンチャー企業であるが故に布陣が強固ではないが1人で様々な課題に対して業務を進めたり、と活躍しているようです。
また、事業会社において事業投資先の立て直し責任者になったメンバー、経験を活かして事業会社の経営陣になるメンバー、PEファンドの投資担当となっているメンバーもいます。
企業再生業務を遂行すると、クライアントの経営情報を全て入手しながら、社長・CFO等経営陣と一体的に業務を遂行し、疑似経営を経験することができるため、様々なポジションで活躍できるような経験・スキルを得られますし、特に将来的に事業会社のマネジメントキャリアを考えている方には適していると考えています。
最後に繰り返しとなりますが、企業再生は当然に当社の力のみでクライアントが再生するわけではなく、クライアントの経営陣・従業員、銀行・株主、仕入先・取引先等ステークホルダーがあっての企業再生です。
それでも、その中で重要な役割を果たしていることは確かであり、それ故に企業再生業務のやりがいや価値を強く感じられると思います。