今回は、CFOへの転職について、PEファンドの投資先でCFOを歴任した経験を持つMWH HR Products株式会社の代表取締役社長 大原智彦氏に話を伺いました。

日々、CFOポジションへの転職支援に携わっているからこそ見えてくる最新の動向を踏まえ、CFOの転職機会や平均年収、最適な採用手法について解説します。

CFOポジションの転職機会

CFOポジションへの転職機会として、「PEファンドの投資先」、「ベンチャーキャピタルの投資先」、「事業会社の子会社」、「海外拠点」が最近人気です。

それぞれの採用動向について、詳しく解説します。

PEファンド

PEファンドは金融業界出身者が中心で、「数値管理を徹底し、企業のバリューアップに活かす」というのが基本的な考えです。

中小規模な投資先企業では、数値管理が十分に行われていないケースが多く、ファンドの投資を契機にその強化が図られます。

PEファンドに求められる人材

PEファンドに求められる人材は、以下のような3つのバックグラウンドを持つ人材です。

・事業会社で長年、経理や財務の業務に携わってきた方
・公認会計士資格を有し、コンサルティングファームでの経験があり経営企画ができる方
・経理・財務を軸にしながら、人事、総務、ITなどにも精通している方

PEファンドでは、数値管理を徹底しながら企業の課題を見つけて経営施策に活かすサイクルを継続的に回す必要があります。

高い視座を持ち、金融に関する知識を持つ適任者を採用したいというのが、多くの投資先企業に共通するニーズです。

VC投資先企業

VC投資先企業におけるCFOの主な役割は、資金調達です。エクイティストーリーをしっかり構築し、投資家の皆さんに説明しながら資金を集めていくことが大きなポイントとなります。

「エクイティストーリー＝戦略」であり、説明を創業者やCOOが担当するケースも多くあります。CFOの担う役割はボードメンバーの構成によって大きく異なるため、状況に応じて求められる役割を遂行できる力が必要です。

VC投資先企業に求められる人材

VC投資先企業に求められる人材は、以下のような3つのバックグラウンドを持つ人材です。

・経理・財務の実務に精通した方
・コンサルタントに関わった経験がある方
・公認会計士として一定期間監査法人に勤務し、その後コンサルファームや事業会社で経理・財務業務に携わった経験がある方

CEOやCOOがエクイティストーリーの説明を担う場合、CFOの業務は数値管理やキャッシュフロー管理、資金調達における実務が中心となります。

経理・財務の実務経験を持つ方など、責任を持ってCEOやCOOがメインとしない業務を進める能力が求められます。

一方、CFOがエクイティストーリーの構築から携わる必要がある場合、コンサルタントの経験がある方が好まれる傾向です。コンサルタントの方の中には数字に強くない方もいますが、苦手な部分についてはよりいっそうのキャッチアップが求められます。

また、公認会計士の資格を保有していて数字にも強く、コンサルティングファームで戦略構築に携わった経験がある方は、ベンチャー企業におけるCFOとして非常に高い需要があります。

事業会社

近年、事業会社では、新規事業や既存の事業のシナジーを生み出すためのM&Aが増加傾向にあります。

最も重要になるのは、買収後の対応です。
PMIを含め、買収先企業との戦略をいかに一致させてシナジーを創出し、成長に結びつけるかが鍵となります。

親会社として買収先企業の数値管理を徹底するために、CFOを送り込みたいと考える企業が増えています。

本社や親会社からCFOを送り込むケースが多い一方、中堅規模の上場企業などでは経理財務のリソースが限られており、本社からCFOを派遣する余裕がないことも少なくありません。このような場合、外部から豊富なキャリアを持つ人材を採用する動きが見られます。

M&Aを行った子会社におけるCFOの主なミッションは、月次決算や管理会計を含む数値管理の徹底です。そのため、経理財務のキャリアをしっかり積み上げてきた人材を中心に採用を行うケースが多くなっています。

海外拠点

海外企業をM&Aする機会が増える中、誰をCFOとして送り込むのかが企業規模を問わず大きな課題です。

近年は、海外駐在が可能でCFOとしての実績を持つ人材を中途採用する動きが目立つようになっています。

英語力があり海外駐在経験を持つ人材となると、母数は非常に限られます。

海外に拠点が複数ありCFOがいる場合でも、親会社において海外赴任が可能で十分な英語力を持った後任者が不足しているケースも少なくありません。

そのため、経理財務系の畑を中心に英語力と海外駐在経験を有していると、海外拠点のCFOポジションで活躍できるチャンスに繋がる可能性が高いと言えます。

CFOの平均年収

PEファンドやVCのCFOの平均年収は一般的に高い傾向です。

しかし、VCの投資先企業のステージによっては資金が限られているため、ベースの給料がそれほど高くないこともあり、ストックオプションで勝負するケースも見られます。

一定水準以上の年収を求めるのであれば、PEファンドの投資先への転職が適しています。

また、事業会社系もある程度安定した給与が得られるでしょう。

若くて豊富な経験はないものの、裁量を持ってエクイティストーリーを作りながら資金調達を行いたい方は、ベンチャー企業が適しています。

会社の成長に必要な資金を集めて既存の経営陣とともに会社を大きくしていく実感が味わえるのは、ベンチャー企業ならではです。

CFOの採用手法

リファラル採用

リファラル採用は、自社社員から知人や友人を紹介してもらう採用手法です。

CFOポジションの転職に際し、リファラル採用を実施しているケースは非常に少ないのが現状です。PEファンドや事業会社ではほとんどありません。

ベンチャー企業では、成長ステージが低い段階でCFOをリファラルで採用することもありますが、ステージが進むにあたって実績が重視され、リファラルでの採用は少なくなる傾向です。

ヘッドハンティングや転職エージェント

ヘッドハンティングと転職エージェントで得られる転職のチャンスはほとんど同じです。

PEファンドの場合は、事業会社と同様高い年収のハイクラスポジションがあり、こうしたポジションは一本釣りのような形で採用されることもあります。

ただし、すべてのエージェントが同じポジションに関する情報を持っているわけではありません。PEファンド側が、限られたエージェントに希望のポジションに関する情報を渡しているケースもあります。

PEファンドのCFO採用を得意としていそうなエージェントを見極めることや、複数のエージェントに登録して選択肢を広げることが重要です。

なお、CFOの採用状況は、事業会社の中でも規模感ごとに大きく異なります。
上場前の中堅企業の場合は、CFOのポジションを直接募集しているケースもあるため、事前の情報収集が必要です。

求職者の方へメッセージ

弊社はCFOポジションを募集している企業とのネットワークを有しているため、PEファンドやVC、大手事業会社ではテクノロジー系企業を中心に、数多くのCFOポジションをお預かりしています。

また、これまでCFOポジションへの転職を数多く支援してきた実績があり、業界に精通したコンサルタントも在籍しているため、初めて転職を検討している方も安心して転職活動に望めます。

求人のご紹介だけでなく面接対策や履歴書の添削もサポートいたしますので、CFOポジションへの転職をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。