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CVCが求める人材やスキル|投資先とのリレーションシップが大事
目次
近年、企業が自社の成長戦略の一環として、他企業への投資を行うCVC(Corporate Venture Capital)が注目を集めています。
CVCは、単なる資金提供の枠を超え、企業が新たな市場や技術を取り込むための重要な手段となっています。しかし、その仕事内容や求められる人材については、まだまだ一般にはあまり知られていません。
この記事では、MWH HR Products株式会社のコンサルタント 河野みづほ氏がCVCの概要から、CVCの具体的な業務内容、CVCが求める人材について解説いたします。
MWH HR Products株式会社 シニアコンサルタント 河野 みづほ
プロフィール / Linkedin
東京理科大学工学部電気工学科卒。
新卒では、東芝のメモリ事業にて設計開発に従事。そこで働く中、人のモチベーションや能力を最大限発揮できる環境づくりに興味を持ち人材業界へ。
パーソルキャリア株式会社では、キャリアアドバイザー/リクルーティングアドバイザーとして製造業領域を担当。
その後、人材紹介と出会い、キャンディデイト・クライアントを一気通貫でご支援してみたい気持ちから、エグゼクティブサーチの株式会社経営者JPに入社。株式会社経営者JPでは、投資ファンド・製造業・建設業・サービス業を中心に経営者・リーダーのご支援に従事。
パーソルキャリア、経営者JP在籍中にMVP受賞歴あり。
現在は、MWH HR Products株式会社のシニアコンサルタントとして、投資ファンド・製造業・建設業を得意領域としつつ、製造小売・小売・サービス業の転職支援を行う。
コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)とは
コーポレートベンチャーキャピタル、略してCVCは、企業が新しい技術やイノベーションを探求し、それに投資する手段の一つです。
実は原型はかなり昔で、1914年のデュポンによるゼネラルモーターズ(以下GM)への出資が最初であると言われています。
第一次世界大戦の開戦により自動車産業へのニーズが高まると予想したデュポンは、当時まだ創業6年目のスタートアップであったGMに投資し、大きな利益を得ました。また財務的なリターンを得ただけではなく、自動車に使用されるレザーやプラスチック、塗料などデュポンが持つ製品のイノベーションのきっかけともなりました。
その後、1990年代からCVCが設立されるようになりました。
当時はIT・通信や金融業界の大手企業が設立するCVCが多く立ち上がりましたが、2010年代にはオープンイノベーションの重要性が増し、2010年代後半からは製造業やサービス業・運輸業など、CVCを設立する大手企業の業界も、それらの投資分野も多様化し現在に至ります。
ずいぶん前からCVCに取り組む企業が出てきてはいますが、成果が測れるのは10年スパンであること、やはり新規事業を立ち上げるという意味で皆様相当苦労をされており、かなり順調です、という企業は少ないようです。
CVCの仕事内容とは
CVCの仕事は、単に投資をするだけではなく、もっと広範囲にわたります。
CVCがまず考えることは、自社の経営戦略や未来に向けたビジョンに基づいて、どの企業に投資するかということです。
特に、ベンチャー企業だけに限らず、さまざまな企業を対象に、自社の目指す方向に沿ったパートナーを見つけることが重要です。
具体的には、投資候補となる企業の経営陣とコンタクトを取って、まずはこちらのビジョンを説明し、相手がどのように興味を持っているか、そしてどのような協業が可能かを探ります。その後、投資を決めるわけですが、これは単にお金を出すだけの話ではありません。投資した後も、その企業との関係を深め、共に手を組んでいくことが求められます。
CVCの仕事は大きく3つの役割に分かれます。
まず、投資先の企業を探し出して、自社との橋渡し役を果たす営業的な役割があります。そして、投資を行う際の財務的な側面を担当するファイナンスの役割、最後に、自社の強みを活かして投資戦略を立てる事業開発的な役割です。これらの役割は、特にCVCの立ち上げ期には、一人が複数の役割を兼任することがよくあります。
CVCが採用したい人材とは
CVCで求められる人材についてですが、企業によって多少異なります。
しかし共通して言えるのは、「投資先とのリレーションシップを築ける人材」が求められるということです。CVCの仕事は、単に投資を行うだけではなく、その後の協業を成功させるための橋渡し役が非常に重要です。この役割を果たすには、営業経験だけでなく、CVCやベンチャー投資に関する知識や経験が必要です。
また、ファイナンスの知識が豊富な人材も非常に重要です。
特に、ベンチャーキャピタルや他の企業でCVCに携わった経験がある方は、非常に高く評価されます。CVCとM&Aのファイナンスは少し異なる部分があり、CVCではベンチャー投資の経験が特に重視されます。
新しくCVCを立ち上げる企業では、全体を見渡すことができるジェネラリストが求められます。立ち上げ段階では少人数で多くの責任を担う必要があるため、幅広いスキルセットが重要です。特に、自社の事業を深く理解し、CVCに関する知見を持つ人材は非常に貴重です。
支援しているCVCの会社
私が支援しているCVCは、主に製造業をバックグラウンドに持つ企業が多いですね。
製造業は、ものづくりの強みを活かし、関連するベンチャー企業との協業を通じて新たな価値を生み出すことができます。また、一部ではエネルギー関連の企業とも関わりがあり、幅広い分野でCVC活動を展開しています。
求職者の方へメッセージ
最後に、CVCに興味を持たれている方へのアドバイスとしては、まずは自社での経験を積むことをお勧めします。
CVCへの転職を考えている場合、まずは現在の勤務先でCVCに関わる機会を探すことがキャリアアップの第一歩となります。自社での経験を基に、次のステップとして他社のCVCに移ることが理想的です。
とはいえ、現職ですべての方にチャンスがあるというわけでもなく、企業側の視点でも自社のことを深く理解していることはもちろん新しい、新鮮な視点も求められています。
新しい事業を作っていきたい、大手企業とベンチャー企業のシナジーを生み出し日本の将来のために貢献したい、という想いをお持ちでいらっしゃる方はぜひCVCというキャリアも視野に入れていただくとよいかと思います。
こういったキャリアにご興味をお持ちの方はぜひ弊社へご相談ください。
担当コンサルタント
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河野 みづほ
自動車業界・自動車部品業界
電気・電子・半導体・機械関連業界
消費財業界(化粧品・日用雑貨など)
食品業界・外食業界
商社・流通・小売・サービス業界
専門分野:製造、建設、事業承継ファンド